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月日 テーマ 場所
2006年11月17日(金)
-18日(土)
パワーアップした環境文化都市:長野県飯田市を訪ねる 長野県飯田市

今回は、循環ワーカー養成講座の第5回目「自然エネルギーとまちづくり」での講師、環境課の池戸氏のご案内の下、長野県飯田市を訪れま した。市民共同発電、飯田市の森林行政 と木質ペレットの製造・利活用の他、日本の棚田百選「よこね田んぼ」 やユニークなまちづくりの現場を見学してきました。また、南アルプスと天竜川を望む温泉やそばうち体験など の信州の食文化も堪能してきました。

■プログラム
<11月17日(金)>
12:00 高速バス伊賀良停留所集合(参加費徴収)
12:15 フィールドワーク出発
12:45 昼食、「ごんべえ邑」にて「箱膳」。<食文化・どぶろく特区について>
14:15 明星保育園「おひさま太陽光市民共同発電」<環境教育について>
15:00 おひさま市民出資記名板の見学、
りんご並木」 (日本の道100選・かおり風景100選)と「裏界線」の散策
15:15 りんご庁舎3階会議室にて、森林行政と木質ペレット製造・利活用(市林務課)
15:45 まちなかインフォメーションセンター見学
16:15 おひさま進歩エネルギー有限会社事務所にて「集中管理システム」などを見学
和菓子いとうや「商店街ESCO」実施状況の見学
17:30 三宜亭本館にチェックイン
18:30 交流懇親会(三宜亭本館)<11月18日(土)>
08:30 三宜亭本館 出発
09:10 日本の棚田百選「よこね田んぼ」、よこね田んぼ保全委員会の活動を見聞
10:10 直売所あざれあ「そば打ち体験」
12:00 ~信州そばで昼食~
13:00 木質ペレット製造工場(南信バイオマス協同組合) (車窓から見学)
13:30 伊賀良学習交流センター (地元の木材で建設、太陽光・ペレットストーブ導入)
14:30 フィールドワーク終了
「りんごの里」にてお土産など(高速バス伊賀良停留所に隣接)
15:19 高速バス伊賀良停留所 発 → 新宿19:15到着

▼報告
【11月17日(金):1日目】
今回は、事務局を含め総勢11名で、循環ワーカー養成講座第5回のテーマでも取り上げられた、南信州の長野県飯田市へ向かいました。土曜日の朝8時に新 宿西口のバスターミナルを出発し、高速バスで中央道を西へ約4時間、12時過ぎに飯田市の伊賀良(いがら)停留所に到着しました。マイクロバスに乗りこ み、40分ほど山道をバスに揺られました。バスの中では、池戸さんからご挨拶と飯田市の紹介、車窓の風景の説明などをしていただきました。2、3日前に冷 え込んだとのことで紅葉が美しく、また真っ赤な実のなったりんごの木や柿の木、かりんの木に目を引かれました。

1.ごんべえ邑(12:45~13:45)
まず向かったのは南東方面の山あい、千代地区にある「ごんべえ邑」です。多品種を少量ずつ栽培した自然の食材で、昔ながらの食事や宿泊ができます。こち らで「箱膳」の昼食をいただきました。手作りで仕込まれたどぶろくは、南信州の空気のようにすっきりとした味わいでした。周囲の畑で採れた野菜、地元の 鮎、卑弥呼も食べたという古代米やイノシシのお汁などの素朴な郷土料理を古民家風情緒のある居間で味わいました。管理されているご夫婦は、ご友人夫婦と 2001年にごんべえ邑を開かれたそうです。地元で、昔ながらの方法で農作業をし、採れた作物をかまどで料理する、というように、昔ながらの「くらしの提 供」を目指されているとのことで、短い時間ながら心地よく過ごさせていただきました。

▲ごんべい邑『おてんとう様の恵み』体験処 ▲箱の中からお料理を出し、その箱の上に置いていただきました。 ▲おかわりのお汁を囲炉裏にかけていただきました。

次に、太陽光パネルを設置している明星保育園に向かいながら、まず原さんより、おひさま進歩エネルギー(有)の紹介をいただきました。エネルギーの地産 地消を目指しているとのことで、一つはBDF(バイオディーゼル・フューエル)に関する事業を行っています。BDF精製の実験プラントを2004年7月に 設置し、使用済みのてんぷら油を燃料に転換しているそうです。また池戸さんはご自身の車で、このBDFを1回に10リットルずつ給油しながらなんと四国ま で(!)行かれたことがあるそうです。
太陽光発電事業では、明星保育園をはじめ市内で38箇所にパネルを設置しています。飯田では、年間の日照時間が約2,000時間と長く、太陽光発電に適 しており、様々な家、建物の屋根に太陽光パネルや太陽熱温水器がみられました。さらに、木質ペレットボイラーや間伐材を利用した薪ストーブの普及も行って います。このように、地域に根ざし、かつ広く様々な手法で地球温暖化対策を行っているとのお話で、スケールの大きさを感じました。

2.明星保育園(14:15~14:45)
明星保育園は園児140人ほどの大きな保育園です。14時すぎ、私達が到着すると、子ども達が「こんにちは」と口々に出迎えてくれました。園長先生と、 保育士さん達にお話を伺いました。平成11年に園長先生が所属するボランティア団体から、小さな太陽電池パネルのついたソーラーカーが寄贈されたことが環 境教育のきっかけだそうです。ソーラーカーで遊んだ子ども達の家での会話が変わった、と親が連絡帳に書いて報告してくれたそうです。先生も、子ども達も、 例えば柿やりんごが赤くなるのも、晴れた空も、「お日さまパワーだね」と言うようになったとのことです。お日さまパワーに気付き、大切に思う、「もったい ないの心」も育てています。
平成16年に、NPO法人南信州おひさま進歩との連携で、太陽光パネルを設置しました。
キャラクター「さんぽちゃん」はすぐに子ども達の人気者となり、子ども達と先生とで「さんぽちゃんの誓い」も決められました。毎日復唱しているとのこと で、子ども達の生活にすっかり浸透しています。他にも保育園では、お風呂で電気を消して浮かべる「ろうそく提灯」を作ったり、「打ち水大作戦」に参加した り、太陽光発電についてのパネルシアターを上映したりと、太陽光発電や省エネルギーについて興味深い取り組みを行っています。「家庭への普及のためには、 子どもを媒体にすることが大事です」と園長先生。
また、先生方が手作りされたパンフレット「さんぽちゃんの誓い」もいただきました。取り組みをわかりやすく説明し、子ども達に語りかけ、キャラクターの 絵に子ども達自身が塗り絵をするというもので、先生方の熱心さと思いが大変伝わってくるものでした。その他にも「おひさま通信」など、先生方それぞれが子 ども達のことを考え、「太陽の恵み」を感じてもらえるよう積極的にアイディアを出して行動されていたのが印象的でした。

▲明星保育園。朝7時から夜7時まで保育を行っています。 ▲園長先生と保育士さん。ソーラーカーと提灯とおもちゃ。 ▲さんぽちゃんの数で発電量が見えるようになっていて、子ども達が手動でつけます。

3.飯田市役所りんご庁舎訪問(15:10~15:50)
市の中心部を通って、市役所の第二庁舎、通称「りんご庁舎」へ向かいました。ここにあるりんご並木(日本の道100選・かおり風景100選)は、昭和 22年の大火で街が焼失した後、中学生が復興を願って植えたそうです。最初は、せっかく実ったりんごが盗まれたこともあったそうですが、困難を越えて四半 世紀たった現在、街のシンボルとなっています。また大火の後には、家と家の間に2メートルほどの幅を取って、防火用の道路「裏界線(りかいせん)」が造ら れました。
りんご庁舎では、まず環境問題等に積極的に取り組まれているという牧野市長が、私達のために急遽お時間をお取りいただけることとなりました。災害と貧困 を乗り越えてきた飯田の歴史と「文化経済自立都市」への歩みについてお話をいただきました。お忙しい中、誠にありがとうございました。さらに林務課の方か ら、地域材・木質バイオマス利用の取り組みについてご説明いただきました。2002年8月改定の「21’ いいだ環境プラン」で2010年までに市のCO2を1990年比で10%削減することが定められたことが背景にあり、新エネルギー利用と省エネルギー推進に取り組むこととなりました。公共施設へのペレットストーブ・ボイラーの導入や薪ストーブの一般家庭への普及、地域産材の利用などについて伺いました。
透水性舗装道路を挟んでりんご庁舎のすぐ向かいには、観光案内所「まちなかインフォメーション」があり、観光業に対する積極性が伺えました。

▲町の中心部に、市内「おひさま発電所」の場所を示したパネルがあります。 ▲街のシンボル、市役所前のりんご並木。 ▲裏界線。蔵風の建物とともに、風情を感じさせます。

▲中日新聞記事(2006年11月18日)。地元の新聞社3社の取材を受け、翌日の朝刊に早速掲載されました。(画像をクリックすると記事が読めます。)

4.おひさま進歩エネルギー有限会社(16:20~17:20)
商店街を200メートルほど歩いて、おひさま進歩エネルギー(有)の事業所にお邪魔しました。ESCO事業を行っている和菓子店「いとうや」の3階にあ ります。市内各おひさま発電所での発電量を集中管理するシステムや、省エネ蛍光灯、電源装置などについて、さらに眺めのいい屋上で、商店街ESCO事業で 使用している省エネ設備のご説明をいただきました。明るいメロディーのさんぽちゃんのテーマソングは、地元の高校生の作曲、保育士の方の作詞によるそうで す。
またこちらでは、おひさま発電所と商店街ESCO事業実施のために長野県内や全国で市民出資を募っています。その「おひさまファンド」出資者のアンケー トでは、「たくさんの人の夢と希望の集まったこのような事業に参加できてとても嬉しい」という社会のための投資に賛同する声が多く寄せられているそうで す。
いとうやさんの和菓子をお土産に買って、宿泊先の三宜亭本館へ。街の夜景が一望できる高台にあります。池戸さんと原さんには、その後の交流懇親会にもご 一緒していただき、丸一日大変お世話になりました。ありがとうございました。

▲さんぽちゃんの着ぐるみ。イベント時には、スタッフの方が中腰でかぶります。 ▲省エネ電球や蛍光灯の普及をPRしています。 ▲屋上の装置。噴霧した水の蒸発で外気温を下げ、いとうやさんの業務用冷蔵庫の熱交換効率を良くします。

【11月18日(土):2日目】
せっかくの眺めを期待しつつも、朝は霧がかかっていました。朝8時30分に市のマイクロバスでホテルを出発。お天気を心配しましたが、途中で霧がみるみ ると晴れ、昨日同様雲ひとつない青空となりました。渓流天竜川を越えて山道を登り、再び千代地区の方面へ向かいました。長野県の多くの小学校では、学有林 という小学校で管理する林を持っていることが多いそうですが、飯田市では10年ほど前から、里山保全と教育を目的に裏の林を「学友林」として整備し、炭作 り等の活動を行っているそうです。5.よこね田んぼ(日本の棚田百選)(9:00~9:45)
市の職員でもあり、よこね田んぼ保全委員会の野口さんにご案内いただきました。保全委員会で管理している田んぼの広さは1ha、45枚。地元や県内外の 小中学生が訪れ、田植えや稲刈りを体験しています。「今までの景観を今までの方法で」残していこうとしている点が特徴です。手植え、手刈り、はざかけによ る稲の自然乾燥などをすべて手作業で行っています。さらに、ブルーシートや草刈機など「現代」の道具は使用していません。景観を損なわないよう、電線も棚 田をはずして通しています。こうした配慮により保存された風景を求め、多くのカメラマンや棚田愛好家が訪れているそうです。
田んぼの運営は、メンバー140人の保存会、千代地区の役員(約100人)および地区外のボランティア30~40人で行っています。収穫量を目的とせ ず、地権者と保存会、地元の人、子供たち、そして都会から来る人との交流を大切にし、いい関係をつくっていくこと。これが地区の財産である、との姿勢だそ うです。平均年齢の上昇や参加率の漸減など問題は抱えつつも、「昔ながらの手法」にこだわるところから始め、徹底して景観を保存していくという強い思いが 感じられました。また収穫後ではありましたが、小学生が作った案山子がまだ残っており、子供達が楽しく作業していた様子が想像されました。

▲9月半ばに稲の刈り取りが終わった田んぼ。 ▲写真に写る範囲に、電線などの景観阻害物がありません。

6.そばうち体験(10:00~12:00)
直売所「あざれあ」にて、そばうちを体験しました。そば粉に小麦粉を1~2割入れた二八そばが一番おいしいとのこと。5人前のそばを2人1組で打ちまし た。そば粉に水を少しずつ入れ、均等に水分がいきわたるように手ですり合わせていきます。そばの香りがしてきて、またそば粉の少しざらざらとした感触が心 地よかったです。水をすべて入れたところで、「菊練り」、「へそ出し」など、型に沿ってこね、面棒で四角く伸ばし、そば包丁で細く切ります。こちらには、 各地からの小・中・高校生も体験に訪れているとのことで、ご主人がいつも子供達に話しているという物語も伺いながら、自分達で打ったおそばを存分にいただ きました。
その後、鼎(かなえ)地区のお祭にも、原さんが役員をされているとのことで立ち寄りました。急遽スケジュールに入れていただき、ありがとうございました。

▲まずは、水をそば粉に満遍なくまぶします。 ▲よくこねて丸い形に。ご主人の打ち方はさすが鮮やかでした。 ▲麺棒を使い、きれいに四角くなるようにのばします。
7.伊賀良学習交流センター(13:00~13:50)
伊賀良学習交流センターは、児童向け図書館や公民館・児童センターとして利用されています。地元の木材を100%使った木造の建物で、屋根には太陽パネ ルを設置、暖房にはペレットストーブと、施設全体が環境教育の教材となる建物です。
ここでは、池戸さんがけん玉をご指導・ご披露くださいました。赤い球に緑の葉っぱのついた、かわいいりんごのけん玉です。木のおもちゃを手にして、全神 経を集中させて遊ぶということは、とても重要な実体験による環境教育であるということを、私たちも実感しました。池戸さんは「けん玉で環境教育」という論 文で環境カウンセラーの資格を取られたそうで、多才さに皆驚きました。

▲地元の木を使い、ペレットストーブも設置しています。 ▲温かみのある木の館内で、図書館と公民館の役割を果たしています。 ▲次々と繰り出される池戸さんの技に思わず息を飲みました。
▲『「けん玉」は「道」である』を実践しました。 ▲りんごのけん玉を持って、集合写真。

市内ではちょうど干し柿を作っているころで、橙のすだれが至るところに下がっていた光景は印象的でした。このあたりの柿は、市田柿のブランドで有名だそ うです。専用の機械で皮をむき、軒先につるしています。出荷用のものは、農家の2階部分全部を使って一面に柿をつるし、夜はビニールシートやガラス戸で 覆っているそうです。
最後になりましたが、この南信州を本当に愛してやまないという皆様にお会いし、心のこもったご案内いただき、おかげさまで大変得るものの多いフィールド ワークとなりました。すべてをコーディネートしてくださった池戸さん、1日目にご一緒いただいた原さん、そしておもてなしくださった皆様、誠にありがとう ございました。

文責:事務局 吉田 明子

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