フィールドワーク
月日 | テーマ | 場所 |
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2008年11月8日(土) -9日(日) |
天然住宅のふるさと栗駒・鳴子を訪ねる | 宮城県大崎市、栗原市 |
2008年5月の循環研セミナーで、非営利中間法人天然住宅代表理事の相根氏に、エコハウスと森林再生・活性化をリンクする「天然住宅」プロジェクトのお話「消費者サイドからみた森林活性化と循環型の暮らし方」をいただきました。 今回のフィールドワークは、その天然住宅の木材調達地である栗駒・鳴子で森林保全活動等を行っている栗駒木材株式会社を訪ねてきました。森林再生・活性化の現場で活動を行っている方々のお話を伺うと共に、木材となるヒノキ等の間伐体験作業も行ってきました。 |
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■プログラム【11月8日(土)】 17:00 JR川渡 (かわたび)温泉駅 集合 18:00 「旅館ゆさ」にて夕食・勉強・懇親会 【11月9日(日)】 |
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▼報告 | ||
今回の参加者は総勢6名。宮城県栗原市の栗駒木材株式会社さんにご案内いただき、1泊2日のフィールドワークを行いました。 集合場所は、鳴子温泉郷のJR川渡温泉駅です。川渡温泉には、栗駒木材さんがNPO法人エコラ倶楽部の宮城支部として森林保全活動を行っている「エコラの森」があります。1.「エコラの森」にて、栗駒木材さんからお話を伺いました。(8:30~9:30) まず、「エコラの森」のゲストハウスで、栗駒木材さんから会社の沿革や森林保全活動を行うようになった経緯などを伺いました。栗駒木材さんから、代表取 締役の菅原さん、常務の樋野さん、営業部長の白鳥さん、営業部の森川さん、そして大場さんの総勢5名もの方々にご対応いただき、大変感激、恐縮してしまい ました。 原点は「木こり」という栗駒木材さん。山を守りながら、収入を得て、栗駒で生きていきたいという思いが一番にあるそうです。 天然林のブナの伐採を20年ぐらい続け、ブナを伐採したあとはスギを植林していたが、下草のササが根強く、枯葉剤をまかざるを得なかったとのこと。そう した自然をねじ伏せるやり方に疑問を持ち始め、自然に逆らわない森林の管理をしようという方向に変わっていったそうです。また、製材・販売や建築などに業 容が拡大し、外材を扱うと国内材木が活用されずに山が荒れていくことに気づいたため、国産材一本でいこうと大きな決断をしたそうです。 最初は、それでは食べていけないだろうとの声が多かったようです。理想ばかりでは何もできない。経済として山が成り立たないと食べていけないことを痛感 しながらも、地道な努力と全国の国産材の価値をわかってくださる工務店などの人とのつながりを大切にして、現在の栗駒木材さんの事業やエコラの森での活動 に行き着いたそうです。 エコラの森は、バブル期にリゾート開発の計画が持ち上がり、バブルがはじけた後には産業廃棄物処分場の誘致の話が出て、地元住民の反対運動が起こるなど、様々な経緯を経て、栗駒木材さんが土地を買うことになったそうです。 しかし、エコラの森は260haあり、中小企業の栗駒木材さんだけの力では手に負えない。そこで、関東の工務店に相談したところ、都市住民や事業者の力 を借りて、山の再生を図るNPO法人エコラ倶楽部を知り、その宮城支部として現在森林保全活動がスタートしたそうです。 NPO法人エコラ倶楽部とは、長野県に本部をおき、各地に支部をおいて全国的に森林保全活動を行っています。「エコラ」とは怪獣の名前だそうで、森林を乱開発する人から森を守るよい怪獣なのだそうです。 天然国産材にこだわった建築家や設計師たちと住宅を作っていくときは、施主さんやその家族に将来の自分の家の大黒柱を自分の手で切ってもらうことがある そうです。そうすることで、施主さんの家族のいい思い出として心にも残り、その分家を大切にしてくれ、この山や栗駒木材さんたちのことも忘れないでいてく れるとのことでした。 大場さん曰く、日本では材を切った人が木を植えていないので、カーボンオフセットになっていない。人が手を入れたところは人が管理していかないと森は育たない。次世代に健全な森林をどうつなげていくかがこれからの課題だということでした。 |
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▲「エコラの森」(宮城県大崎市)にて、栗駒木材株式会社の方々からお話を伺いました。 | ▲栗駒木材株式会社から総勢5名も来てくださいました。 | |
2.フィールドにて。(9:30~11:00) さて、今回メインでもある木材となるヒノキ等の間伐体験です。 参加者6名中、間伐体験経験者は2名程度で、皆ほぼ初体験でした。 ヘルメットと片刃ノコギリをお借りして急斜面の山に入りました。 まずは、栗駒木材の方々によるお手本伐採を見せていただきました。 切る木を決めると、木を倒す側に三角の切り込みを入れ「うけ口」をつくったあと、逆側に「追い口」の切り込みをいれ、あとは押して倒すだけ。文で書くと 簡単ですが、この木をノコギリで切る作業がなかなかの重労働。苦労の末、木が倒れたときの達成感は格別です。なかなか楽しい作業でした。 |
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▲エコラの森のフィールドにて、ヒノキの間伐体験を行いました 。 | ▲まず最初に栗駒木材の方による間伐を見学させていただきました。 | ▲うけ口となる位置を決めます。 |
▲これが「うけ口」です。 | ▲いきなりですが、木を切り倒しました。そのあと枝も落とします。 | ▲「1人1本は切りましょう」というノルマがあり、まずは山口代表です。 |
▲久米谷理事です。 | ▲木村さんです。 | ▲事務局の永井さんです。 |
▲私(大澤)はまず手始めに細めのスギを切ってみました。 | ▲木を倒すときは、倒す方向や周辺の木との間隔など気をつけることが多々あります。少々危険な作業でした。 | |
▲ここから田中副代表3部作です。まずは、切り倒せて満足気な田中副代表。 | ▲切り株に腰をおろして、あたりを見回す田中副代表。 | ▲「ちゃんと働きたまえ」と命令している田中副代表。 |
3.栗駒木材の工場にて。(12:30~15:00) 栗駒木材さんの工場に場所を移動して、材木の加工や流通、販売等について、いろいろとお話を伺いました。 まずは、白鳥営業部長から工場内を案内していただきました。 建築用木材は、防虫・防腐・防カビ加工のために有機リン系薬剤などが使用されているものが多く、それだとシックハウス症候群の方々にはとてもよくないと のことです。シックハウス症候群に悩むアレルギー患者の方々と接するようになり、栗駒木材さんが開発したのが「くんえん乾燥」です。シックハウスの原因と なりやすい有害な化学薬品を使用せずに、スモークサーモンなどの食品に使われる燻煙で、木材の防虫・防腐・防カビ効果をもたらすというものです。「くんえ ん乾燥」は製材の過程で工場から出る端材や樹皮、チップやおがくずなどが使用されています。さらに、燻煙を排気する時に冷やすと木酢液が採れ、これに木材 を浸すと防虫などの効果がさらにまします。また、燃料灰は肥料になるなど、エコロジカルでお得な乾燥方法とのことでした。 工場見学の後、大場さんからまとめのレクチャーをいただきました。 国産材の使用拡大が環境問題の解決につながることを改めて現場の声として教えていただきました。しかし、業界の中では、栗駒木材さんの考えに共感してく れるところは多くはないとのこと。基本的な広がり方としては良心的な工務店や施主さんから口コミが多いようです。 最後になりましたが、栗駒木材の方々には短い間でしたが、本当にお世話になりました。熱い思いがとてもよく伝わってきました。国産材利用や森林保護のこ うした良心的な取り組みを広めることに循環研でも関われるといいなと個人的にですが、思いました。本当にどうもありがとうございました。 |
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▲栗駒木材株式会社(栗原市)の工場にて、お話を伺いました。 | ▲当然ながら、たくさんの材木があり、白鳥営業部長からいろいろと説明を受けました。 | ▲アカマツです。梁材にするときれいだそうです。 |
▲この中で「くんえん」されているそうです。 | ▲くんえんした際に抽出される木酢液に材木を浸します。 | ▲そうすることにより、化学薬品等を使わずに、防虫処理が施されます。 |
▲各種材木を購入することもできるそうです。 | ▲大場氏によるプレゼンレクチャーも聞かせていただきました。 | |
▲JRくりこま高原駅で集合写真。 | ▲栗駒木材の方々が全員入っていないのが残念です。段取り悪くて、すみません・・・。 | |
★ 番外編 11/8(土)は早めに現地入りをして、川渡温泉街を散策しました。 湯治場として昔から親しまれているようで、軽く散策するにはちょうどよいサイズの温泉街でした。 「ふたたび みたび かわたび温泉」川渡温泉のキャッチフレーズです。 |
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▲一級河川北上川水系江合川です。 雄大でした。 | ▲共同浴場 (200円)です。地元の方と交流ができます。 | ▲「このイスに座ると気持ちいいです」という川渡温泉観光マップ の紹介に惹かれて行ってみたら・・・。気持ちよかったですよ。 |
文責:大澤由紀子 |
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