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2006年8月30日(水) パーマカルチャーの現場を訪ねる 神奈川県津久井郡藤野町
 今回は、循環ワーカー養成講座の第2回目「パーマカルチャーとエココミュニティ」でお話をいただきました、設楽氏が事務局長を勤めるパーマカルチャー・センター・ジャパン の活動拠点である神奈川県津久井郡藤野町の篠原集落を訪ねました。→ パーマカルチャー・センター・ジャパンのHP
→ 篠原の里センターのHP

■プログラム
14:30  JR中央線 藤野駅集合
15:00~16:30 パーマカルチャー・センター・ジャパン見学
16:30~17:00 篠原の里センター、炭焼き窯など見学
17:00~18:00 意見交換・懇親会
▼報告
 今回は半日という短い行程でしたが、総勢13名の方にご出席いただきました。
パーマカルチャーとは、パーマネント(permanent永久の)とアグリカルチャー(agriculture農業)またはカルチャー(culture文 化)を合わせた言葉で、人間にとって恒久的に持続可能な環境をつくりだすためのデザイン体系のことを意味します。パーマカルチャー・センター・ジャパン は、集合場所のJR藤野駅から10分程の距離にあります。当日はあいにくの小雨でしたが、徐々に晴れ間がみえ、無事に畑などを回ることができました。
1.パーマカルチャー・センター・ジャパン見学(10:10~12:00)
まず、もともと農家であった家を改修してつくられた事務所にて、設楽氏よりセンターについてご説明いただきました。1996年より使用しているこの拠点 は非常に趣のある建物で、建築木材は200年ものであるとのことでした。現在も借家として利用しており、3箇所にある畑も借地だそうです。
1階には講義をする際に使用する広間と台所があり、2階は主に宿泊施設として使用しています。入居当時は手入れがされていなかったため、梁を加えるなどの 改修を行いましたが、全て自然の素材を使っているそうです。
また、冬の寒さ対策として薫墨を断熱材として使用したり、薪ストーブを設置したりしています。ただ、このまきを調達することが大変で、近くで「木を切った」という話があるともらいに行くのだといいます。
建物そのものも効率的なエネルギー利用を考えたものですが、家具や調理器具にも多くの工夫がなされてあります。まず、目を引いたのが太陽熱を利用した調理 器具でした。りんごのダンボール箱の上部から太陽光を取り入れ、断熱材として入っているもみがらの中でお米などをたく事ができる優れものです。より光を集 めるために油の飛び散りよけのアルミガードが取り付けられ、晴れている日は1時間半程でゆで卵ができるそうです。
また、太陽光を利用した「お茶の葉乾燥機」や、生ゴミを土へ還す「みみずコンポスト」も活用されていました。
▲パーマカルチャー・センター・ジャパンの事務所
木造2階建ての、古く趣のある建物でした。
▲事務所1階の広間にて。 ▲階段は手すりもなくとても急で、みなさん慎重にのぼっていました。
▲1階には囲炉裏もあり、パーマカルチャーに関する資料や写真などが展示されてありました。 ▲“みみずコンポスト”
台所からでる生ゴミを、みみずが分解して土に還る仕組みになっています。
▲“太陽熱を利用した調理器具”この箱の中にお米や卵を入れて調理します。
施設内をひと通り見学した後、歩いて15分ほどの場所にある実験農地へ向かいました。農地を一目見て、まず他の畑と違う点は、土があらわになっていない ということでした。通常、畑では畦を作り作物を育てる場所と人が歩く道は一目瞭然ですが、こちらの農地は一面の緑で、作物の上に足を踏み入れ設楽氏に注意 を受ける場面もありました。下をよく見てみると、人の歩く道には木材チップが敷かれており、年に1回古いチップを肥料として農地を撒き、道には新しいチッ プを敷き土地の栄養分を蓄えるとのことでした。ここでは、ほとんど肥料は与えず自然の力で作物を作ります。そのため、一度に作物ができることはなく、それ ぞれの適切な時期に実をつけます。
また、この農地では一種類ごとに作物を植えるのではなく、育成の相乗効果をもたらすよう、相性の良い組み合わせごとに栽培しています。
周囲の人々は、こんなやり方でうまくいくものかと疑問に思われていたそうですが、作物は着々と成長し、今年藤野町で流行った疫病にも耐え、他の畑では全滅であったトマトも唯一実りをつけたそうです。
▲実験農地は一面の緑で、一見、畑には見えないほどでした。 ▲栽培方法や作物の種類などを、設楽先生に説明していただきました。ありがとうございました。 ▲実験農地で栽培された大きな“ししとう”。その場でかじっていただきましたが、全く辛くなくおいしかったです。
▲背の高い作物、低い作物を組み合わせて一箇所に植え、立体的に栽培しています。 ▲“チキントラクター”
鶏を直径2mほどのチキンドームに入れ畑をまわり、「草刈り」「トラクター」「肥料供給機」として利用していました。
▲疫病に耐えて育った、貴重なトマト。
2.篠原の里センター、炭焼き窯など見学(16:30~17:00)
「篠原(しのばら)の里センター」は、里山を中心とした恵まれた環境の中での、地域の活性化を目的として設置された特定非営利活動法人の施設で、宿泊・ 研修・イベントなどで利用されています。一番の特徴は、改修した小学校を使用している点です。まず、食堂にて事務局の川手氏よりご説明をいただきました。 施設内には、教室を改装した宿泊室が3部屋、研究室が4部屋、食堂の隣には土間がついており、この炊事場は宿泊者も使用することができるそうです。環境負 荷を考え、校舎改築では地元の木材を利用し、バイオ浄化槽も設置、排水をバクテリアで分解・醗酵させ、その熱で水分を大気中に蒸発させることにより河川に は一切放流しないシステムを採用しているとのことでした。布団宿泊は一般2,500円・小学生以下2,000円、寝袋宿泊は一般2,000円・小学生以下 1,800円で、日帰り研修などでの利用も可能。イベント活動としては、炭焼き体験・陶芸体験・蛍観察・ブルーベリー摘み・竹を使った楽器づくりなどがあ り、以前ニュース番組でも紹介されたということで、そのVTRも観賞させていただきました。
その後、実際に施設内を見学させていただきましたが、黒板のある教室が畳敷きになっている図は、非常に不思議な光景でした。しかし、一方で非常に温かみ を感じる場であり、夏場、土日に宿泊は非常に混み合うとのことでした。また、施設内にはシャワーしかありませんが、近くに温泉もあり、寒い時期には地元の 間伐材をつかったペレットストーブも活躍するとのことでした。
篠原の里からパーマカルチャーセンターへの帰り道では、炭焼き窯を見学し、屋台風の直売所で地元の野菜を購入することができました。
▲篠原の里センター。小学校の校舎の前に、炭で文字を作った看板が立てられていました。 ▲事務局の川手さん。丁寧なご説明ありがとうございました。 ▲教室を改装した宿泊室。教室と畳の不思議なコラボレーション。
▲地元の間伐材を利用したペレットストーブ。 ▲篠原の里センターの近くにある炭焼き窯。ちょうど炭を焼いているようで、土で閉ざされていました。 ▲たまたま通りがかった野菜の直売所。みなさん新鮮な野菜を購入し、品切れ続出でした。
3.意見交換・懇親会(17:00~18:00)
パーマカルチャー・センター・ジャパンでは、様々な講座を開催し、7年間で約300名の塾生を送り出しています。来年には九州にもセンターができる予定 で、最終的には全国に10箇所ほどセンターを作っていきたいとのことでした。
「当初は、現地の方々との信頼関係を得ることが大変だった。」と語る設楽氏。生活にしろ、畑にしろ、周囲とは一風変わったやり方で取り組んでいたことも あり、怪しい宗教団体と噂されたこともあったと言います。現在では、地元のコミュニケーションの場の中心となりつつあり、道端で会う人会う人に声をかけ、 笑いあう姿が印象的でした。
皆様の感想としては、「将来は、ここのように畑を耕して生活したい。」「非常に憧れるが、都会になれた自分がやっていけるか不安。」「現代人は、経済の 裏づけがないと安心できないので、その点が課題。」「食料から家づくりまで地元に根付いた自給自足生活を実現している。エココミュニティづくりとして、と ても興味深い。」などがあげられました。
独自のシステムで循環型社会を確立しているパーマカルチャーについて、循環研として非常に学ぶべき点が多いのではないかと感じました。
お忙しい中ご協力いただきました設楽先生、篠原の里センター事務局の川手さん、本当にありがとうございました。
▲懇親会の際、野菜たっぷりのラタトゥユやオムレツ風ポテトなどをいただきました。 ▲おいしいお料理に手作りワインもいただき、本当にありがとうございました。

文責:事務局 齋藤里絵

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