HOME >> フィールドワーク >>「富士通化成リサイクル(株)首都圏リサイクルセンターを訪ねる」

フィールドワーク

月日 テーマ 場所
2008年2月26日(火) 富士通化成リサイクル(株)
首都圏リサイクルセンターを訪ねる
神奈川県相模原市
 個人情報、機密情報の保護が厳しくなる中で、IT機器のリサイクルにあたっても各種の配慮が求められています。一方、世界的に希少金属資源の調達が困難 化するといわれるなか、「都市鉱山」としての電子機器の効率的な回収・リサイクルは、循環型社会の重要な要素となってきています。
そこで今回のフィールドワークは、パソコン等のリサイクルを手がける富士通化成リサイクル株式会社の富士通首都圏相模原リサイクルセンターを訪ね、その IT機器のリサイクルの実態を見学してきました。また、パソコンの解体作業を通じて、そのリサイクルを身をもって体験してきました。→ 富士通首都圏相模原リサイクルセンター
■プログラム
13:00 JR横浜線橋本駅 改札口集合
13:40 富士通首都圏相模原リサイクルセンター到着
概要説明:(1)富士通リサイクルシステムの概要
(2)使用済み製品リサイクルへの取り組みについて
(3)富士通化成リサイクル㈱の概要
14:10 リサイクルセンター施設見学
15:10 パソコン解体体験
17:10 質疑応答
17:30 JR横浜線橋本駅にて解散
▼報告>
 今回お邪魔した富士通首都圏相模原リサイクルセンターは、神奈川県相模原市にあります。JR橋本駅に集合した後、神奈川中央交通バスに乗り、緑ヶ丘停留 所で下車(乗車時間は10分程度)。そこから5分ほど歩いたところに同センターはありました。
矢島所長をはじめとするセンターの皆さまのお出迎えを受けた後、まずセンターの概要説明をしていただきました。1. 富士通首都圏相模原リサイクルセンターの概要
1995年に富士通化成(株)が相模原事業所を開設し、富士通(株)からリサイクル業務が移管。富士通化成 (株)は、リサイクルビジネスを強化するために、リサイクルセンターを相模原市橋本台に移転し、2006年4月には、100%出資の形で富士通化成リサイクル (株)を設立。2007年5月からは富士通化成リサイクル(株)が富士通化成(株)からリサイクル業務を全面的に移管され、相模原市橋本台にある同センターを運営しているそうです。
現在の従業員数は38名で、年に約4,000tの使用済み機器を回収・処理しているとのことでした。主要なサービスとしては、(1)使用済みIT機器類 の回収・リサイクル処理、(2)記憶媒体類の破壊・消去(オンサイトサービス/受託処理サービス)、(3)発砲スチロール材のリサイクル処理(溶融固 化)、(4)廃棄証明書(処理完了報告書)の提供の4つを行っており、主な処理製品は、PC、銀行ATM端末、販売情報管理システム(POS)端末、複写 機などだそうです。
同センターでは、全国6ヶ所に展開しているリサイクルセンターの一つとして、首都圏から出た事業系の使用済み機器類を処理しているとのことで、富士通以 外のメーカーの製品も処理しているとのことでした。2006年度の再資源化率は92.3%。サーマルリサイクルを入れると98%(残りはゴムやウレタンな どで、埋め立て処理されている)に達しているとのことで、高度な処理率を実現しています。ただし、パソコン生産台数に比べ、こうした国内の適正な処理がで きるリサイクルセンターに持ち込まれる台数の比率は1割程度に過ぎず、残りは埋め立て廃棄処分されたり、海外に流出しているのが実情のようです。
▲まずはセンターの概要説明を頭で学習・理解しました。 ▲ISO14001と9001の認証を取得されていました。
2. リサイクルセンター施設見学
概要説明を受けたあと、施設内を見学させていただきました。
中間処理は、搬入→受入→受入品仕分→解体→HDD破壊→プラ破砕・溶融→出荷検査→出荷の順で行われています。以下では、その経路に沿って、写真をまじえて紹介します。まずリサイクル原料を搬入し、受入れます。最初にトラックごと重さを計測し、積荷を全て下ろしたあとのトラックの重さを引くことで、積荷の重量を算出しています。
▲トラックごと重さを計測しています。 ▲この機器で搬入前後の重さを計測し、受入証明を発行しているそうです。
つづいて、受入品の仕分けをします。コード化されたラベルが貼られ、一覧リストと照合しないと出所が分からないよう、機密情報の保護がなされていました。
▲解体しやすいよう、種類ごとに分別されます。 ▲銀行から廃棄されたATMも処理されます。
仕分けが済んだらいよいよ解体です。製品ごとに、手作業で解体されます。我々参加者も、見学のあとで実際にノートPCを解体させてもらいましたが、なか なかコツと根気のいる作業でした。もっと製造段階から解体・再利用がしやすい設計にできないものか…と疑問に感じました。
機密情報が含まれていたHDDについては、施錠管理された金属製のケージにしまわれ、破壊処理に回されていました。
▲解体は手作業で。これはブラウン管の解体作業の様子です。 ▲解体後は、パーツごとに積み重ねられていきます。 ▲こちらもブラウン管。液晶への切り替えが進み、今後ますます廃棄が増加しそうです。
▲解体後のHDD保管ケージ。施錠管理されています。
HDDの破壊は、施錠管理された別室で行われていました。残存するデータが誤って漏洩すると、排出企業の信頼を損ねるばかりか、損害賠償請求にまで発展 すれば莫大な損失を生むことになるため、排出企業はかなり敏感になっているとのこと。個別情報が分からないよう、まず顧客情報を剥離除去してから作業者に 回すなど、徹底した管理が行われていました。
データ破壊の手法は2種類。データ消去ソフトでディスクにダミーデータを上書きする方法が一つ。これは企業ごとに何回上書きするかが個別に決められてい て、何十回も上書きするところもあるとのことでした。この場合、排出企業の承諾があれば、リユース部品として中古市場向け製品や富士通製品の保守・修理用 部品として活用するそうです。もう一つの手法は、物理的破壊。HDD自体に数箇所の穴を開け、使用不能にする方法で、最近ではこの手法による廃棄が99% を占めるとのことでした。この処理を施した場合、鉄、アルミニウム、銅などにマテリアルリサイクルされているそうです。
いずれの場合も、排出企業とは機密保持契約が結ばれており、特にHDDを物理的に破壊した場合は、破壊後の様子を撮影した写真を添付した証明書まで発行 することができるそうです。機密情報の厳重な取扱いがなされていました。
▲データ上書きの様子。消さないまま廃棄されているケースもあるとか。 ▲専用の機器で、数箇所の穴を開けて物理的に破壊していました。
解体が終わったあと、プラスチック素材については、別室で破砕・溶融を行っていました。音漏れしないように密閉されているため、作業員への騒音負担を考慮し、交替制で作業が行われているとのことでした。
▲破砕室。密閉されており、開けるとかなり大きな音の中で作業していました。 ▲これが破砕機。1機のみとのことでしたが、性能はよさそうでした。
以上の作業が終わったら、検査を経て出荷されます。種類別に再生業者に渡されるとのことでした。例えば、プリント基板や集積回路は金やパラジウムなどの 貴金属の回収・再生されるほか、金属くずは地金、部品くずは溶融後に同じく地金になるそうです。また、ディスプレーやブラウン管はガラスカレットに再生し ているとのことでした。なお、上記のセキュリティ体制に加え、センター全体としても、施錠管理はもちろん、夜間は専門のセキュリティ業者に依頼しているほか、就業時も9台の監 視カメラが作業を監視し、従業員にも抜き打ちで帰社時の持ち物検査を行うなど、情報漏えい防止をはかるにために徹底した管理を行っていました。3. パソコン解体体験
施設見学のあと、実際にノートPCの解体作業を体験しました。解体には要領やコツが必要で、なかなか手こずる箇所もありました。
ひとしきり自力で取り組んだあと、センターの方にお手本を示してもらいました。我々が苦労していた所も、いとも簡単に解体。さすが、鮮やかなお手並みでした。
お手本を見た後、何とか最後まで解体。もう一度組み立てる自信はないものの、ちょっとした達成感を味わいました。
▲PCの解体作業を体験。なかなか複雑に組み立てられています。 ▲センターの方のお手本。お見事でした。 ▲あともう少し。全員が最後まで解体できました。
解体後、質疑応答の時間をいただき、解散。リサイクル現場を見学し、PCの解体をすることで、多くのことが頭と体で理解でき、充実した半日になりました。
今後は、廃棄や海外に流出している使用済み機器をいかに回収していくかについての重要性を感じるとともに、解体・リサイクルしやすい製品設計のあり方について考えるよい機会となりました。
末筆ながら、お忙しい中ご案内いただきました、矢島様、山本様、誠にありがとうございました。

文責:事務局 寒田 亮

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